かじドゥンドゥン

獣の棲む家のかじドゥンドゥンのレビュー・感想・評価

獣の棲む家(2020年製作の映画)
3.0
内戦で部族同士の殺し合いが止まないアフリカのある国から、船で脱出し、運よくイギリス・ロンドンで難民として保護された夫婦は、広々とした家を貸し与えられる。しかし、こうして安全な我が家を手に入れるまでに彼らが犯したいくつかの罪(よりによって呪術師から盗みを働き、あるいは、よその子を我が子だと偽って誘拐し、その子を密航中の事故で溺死させ、なによりも、多くの犠牲者が出た脱出劇で自分たちだけが安穏な生活を手に入れた)とそれに由来する良心の呵責が、彼らに怨霊を幻視させ、精神と生命に危機に瀕する。

夫婦関係も破綻し、怨霊に唆された妻が夫を殺害しかけるほどに事態は悪化するが、多大な犠牲を払ってでも自分が生き残り幸せになることを肯定した妻は、夫ではなく怨霊の首をナイフで掻き切ると、これを機に、怨霊の脅威は去り、無数の死者の魂とともに広い家で共生する生活がスタートする。

難民の内面的な苦悩を、彼らの土着信仰がもつ心霊イメージや罪の観念を通して形象化した作品。