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レリック ー遺物ーのAirconのレビュー・感想・評価

レリック ー遺物ー(2020年製作の映画)
3.5
RottenTomatoesで批評家92、観客52だったので。
たしかにこれは賛否がわかれるわ。。。
恐怖カテゴリは、ガオー1、ビク3、ゾワゾワ6くらいのバランス。
(振り向いたら怪物がいて追いかけてくる系はほぼ無く、デカい音で脅かしてくる頻度は意味もなくやるほどではないがそれなりに積極的、何か居そうな雰囲気や不気味さがメイン。)

物語の展開として、①認知症のラインの変化と、②固有の怪奇現象的ななにかの真相、が同時に進行していくが、、、ゾワゾワ系なだけあって雰囲気はあるんだけど、その雰囲気がひたすらあることでストレスがかかり続けるということと、ひたすら何が起きているのかわからない、ヒントもほとんど無いので、ただただつらい、というのが実感。
細かい物語の発展が少なくて、話が駆動していない。
ずっと何が起きているのかわからないが、現時点では何が何だか分からないヒントがポツポツと追加されるがそれも少ない。
だからある意味で物語的でなく、リアル介護的なつらさを実感しつつ、正体不明の怪奇現象におびえる感じ。


「裸のババア」というモチーフ、最近のホラーであまりに使いすぎじゃない?
怪物のような「醜くさ」が喚起する恐怖のほかに、独自の「憐れさ」が入って感情的な説得力がプラスされる感じはするが。




低評価の原因は、展開が少ないことと、真相を観客の解釈に委ねたところだと思うけど、自分なりに読み取れた解釈を書くと、、、
まず、少なくとも曽祖父の小屋から黒カビがはじまっていることはなんとなくわかる。

最初に祖母エドナの家に母娘が訪ねてきたとき、一通り家の中を探し回って、母ケイは娘サムがエドナの寝室に入ろうとして、止める。
そしてケイは自分ひとりで祖母の寝室に入り、布団に人間のようなふくらみを発見する。
それを恐る恐るめくるケイ。
この辺の描写で、ケイは自分の母親であるエドナが死んでいる可能性を考えていた。
そしてケイはそのあと、エドナを老人ホームに入れるか考えるが最終的にメルボルンの自宅に呼ぶことにする。

家族に看取られずに小屋で腐っていった曽祖父のシミ、エンディングは細菌やウイルスのようにも見えたけど、呪いみたいなものが家全体を覆うまでになっていて、まあなんというか『もののけ姫』みたいな、最後は静まれーみたいな話なんじゃないかな。

だけど、決して敬老だけじゃなく、認知症の不信感とかウンザリ感を体感させていたので、社会派としてはバランスの話に持っていけているので良いと思った。

小屋に放置はさすがに人間の尊厳としてどうなのか、その間風呂とか食事とかも大丈夫な感じしないし、エドナに対してもベッドで孤独死していること予想できたのにケイはある意味で目を逸らしていた、かといって現実問題として認知症の親の面倒を見るのはかなりキツイことも描写し、考えさせる、という。


おそらく観客は真相をハッキリと描写して因果関係を理解することでスッキリして満足する。
「実はこれはこういう理由だったのだ…」、と。
観客の思考コストを肩代わりしてあげることはできたのか。
おそらく真相を描写することは敬老側に偏ってしまい、観終わった後、現実問題を考えるには逆効果だと思ったのだろう。
この「捨てられた老人の恨み」の方を弱くしないと感情による善悪が勝っちゃう。
「姥捨て良くないよね」というシンプルな後味は避けてる。
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