ふぇいるくん

ナイト・ハウスのふぇいるくんのレビュー・感想・評価

ナイト・ハウス(2020年製作の映画)
3.5
あまり魅力的とは言えない主人公、舌足らずな謎解き、途中で展開が読めてしまう荒い筋立て、何より映画の根底を支配する壊滅的に自己愛的で見苦しい倫理観・・・これだけ並べ立てると映画史に埋没していくゴミ映画の一本のようにも思えますが、実はこの映画には画期的な映画的幽霊表現が存在します。

幽霊を描いた新旧洋邦の名作「たたり」「回転」「ヘルハウス」そして黒沢清や名匠中川信夫の諸作と並べても引けをとらないような、素晴らしい幽霊表現が、このとても傑作とは言えない映画には存在しているのです。

ただ・・・私だけがこの映画に描かれるような幽霊表現を観たことが無い・・というだけで、単なる勉強不足なのかもしれません。
もっと映画に造詣が深い方からすれば「そんなのはもう何年も前に〇〇がやっている」と喝破されることでしょう。

しかしながら私は、私の微かな映画鑑賞人生の中でこの映画に登場するような幽霊表現に出会ったことが無く、非常な驚きと感動をもってそのシーンを心に焼き付けたわけです。

まさに一点豪華主義と言えますが、しかしその鮮烈で恐ろしい幽霊表現を観るためだけに、2時間近くの冗長で緩慢な苦痛を享受せねばならないのは、インド映画やマーベルを観るのとほぼ同じような映画的苦役とも思え、貴重な人生の時間を無為にすることに躊躇する人も多いのでしょうね。