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RUN/ランのjonajonaのレビュー・感想・評価

RUN/ラン(2020年製作の映画)
4.5
面白い。
展開がはやいのもすごくいい。
ものの10分くらいで母親を疑い出して、30分余りでもう母親の恐怖の二面性に娘が辿り着き、さあそっから楽しみましょうという話になってくる。話が早い。
保護者会の圧力懇親会での子供へのリスペクトを感じる母の反応によって、あれ?普通にいい親じゃん?と思わせといての…序盤30分の盛り上げ方がすごいよかった。

てっきり1時間くらいかける展開だと思ってたら半分で片がついたので驚いた。
きれいに30分ごとに驚きの展開が待っていて筋はストレートながら二転三転していく描写のうまさがある。大変勉強になる。

初めから、合否通知を見たくて家の前のポストに取りに行こうとすると毎度毎度母親が先に取って持ってきてしまうという下りを繰り返す事で徐々に過保護を超えた不信感を醸し出す積み重ね演出も見事。3度目は母親が偶然早めに取ってきた風を装ってるも車のドアを開けっぱなしで明らかに焦ってたんだと露わになるのもうまい(結局合否通知もなぜか一向に届かないし…)

障害者をネタにするなとか障害を持つ子を支える親の気持ちになれとか批判もありそうだけど、そんな事は作り手も承知の上だろう。物語の中で毒親のテーマを最大限活かそうとした時にこうした形になるのはある程度仕方のないどころか、むしろそこで逃げずにとことん支配的でミョンヒハウゼン症な母親の異常性を描いてるのは素晴らしい事だと思う。
この母親のあまりにも狡猾な体裁と内面のバランスの取り方等がキャラとして際立っているから(演じてるサラポールソンさんの怖いお顔も相まって)題材の話より作中の一個人として見れる。突き抜けるのって大事。

娘のクロエもクロエで、体こそ病弱だけれど知力と決断力がえげつない。何かおかしいと感じてからの、必死に取る行動がすべて納得のいく本気ムーブなので見ていて清々しいし、本気で追求してるからこそ本気で心配になる。監禁ものって逃げようとする側の創意工夫を見て楽しむジャンルなんだと改めて思い知る。理工学系の能力の高さってこういうサバイブの時に活かされるんだな…羨ましい。俺だったらすぐ死んでたな…

🦑ネタバレあり🦑

最後のまさかの毒盛り倍返し展開はなるほど!やっちまえ!っとスカッとする。ただその前のお母さんにお家で追い詰められた時に自分で毒薬を飲んで(母親の死なせずに管理したいという支配欲を見越して)自分を病院に運ばせるという主人公の決断は、直前に母親が謎の薬を注射して自分を殺そうとしてきてるかも?と疑心暗鬼になってた心情を含めると若干決断に至る理由が読めなかった。
殺そうとしてきてるのに自害するのは…普通に親にとって都合よくない?あのままトムさん(涙)同様捨てられてたかも?自分の『殺すという決断』で死ぬのはアリだけど娘自身が『自害を選ぶ』のは耐え難い、って心情なのだと察知しての行動だとしたらすげーことだけど。そういうこと?

しかしあのシーンの母親が泣きながら『あなたを殺す訳ないじゃない…』とめっちゃ危なそうな注射器片手に近寄ってくるのは怖すぎて素晴らしかった。

【今日の名言】

(障害者家族の内輪のことが世間からみるとブラックボックスであるという社会的事実を上手く逆手に取った母ダイアンの狡猾なひと言。この言葉自体は正しくもあるのがなおさらずるい)
ー健常者のにわかな知識は逆に害になる!


(母親に見つかって子供を渡せ!警察が見たら私が母親であんたは変態だ!と迫られるも、子供を渡さない善良な通行人トムさんの名言)
ーそれでも、だめだ。

ーあなたの為にやったの!!
…愛しい子
私ほど我が子を愛してる親はいない
私がやることはすべてあなたの為なの

ー私のためじゃない。
自分のためでしょ。

ーお薬の時間よ
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