Hiroki

精神0のHirokiのレビュー・感想・評価

精神0(2020年製作の映画)
3.0
これだけ人の話を聞き続けられる山本先生はすごい。そして人の話を聞き続けるという姿勢は相田監督のカメラも同調していて、映画の観客はカメラを通して患者や山本夫婦の聞き手となる。そのための必要な執拗なまでの長回し。

例えば玄関に入ってからお茶菓子を準備して応接間で一息つくまでをワンカットで見せる。しかもお年寄りだからすべての動作が若者のそれと比べてゆっくりとしていて、正直見ているとイライラしてしまう。しかし、お年寄りの身体を体験すると考えれば面白い。映画が他者の人生を疑似体験させてくれる。ただ自分は耐えられず途中何度も一時停止してしまった。

人物の顔のクロースアップの画の力が強い。人が生得的に持っているような迫力を感じる。誰かに触れたり、作業したりする手をクロースアップで撮る。これが中々魅力的で被写体としての手のポテンシャルを感じた。人物のクロースアップや、定点で捉えた風景をモンタージュしたりと、映像的にはドキュメンタリーというよりもむしろ劇映画的な見せ方をするのが面白い。
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