このレビューはネタバレを含みます
最後の診察で手紙を持って来た患者。おもむろに読み始めると｢4000円…｣、財布から百円玉をいくつも取り出し、千円札を加えて｢まあ、ちょっと足りないけど三千円で｣と山本医師。受け取りながら、ごにょごにょと言い訳を口にする。笑顔を絶やさない患者である夫と｢諦めずに頑張ったから先生と縁ができた｣と語り続ける妻。まさに稀有な関係…。しかし、後半は山本医師とその妻に焦点を当てる…監督を交えた診療最後の晩餐、頼んだ寿司に付いたインスタントの吸物を用意しようと、洗い桶の中の椀は諦め、戸棚から探し出し、ペーパーで拭き、湯を注ぎ、お盆にのせて運ぶ山本医師を延々追う。モノクロで登場するかつての姿に比べ、すっかり無口になり、足元も覚束ない妻。墓参りに訪れた二人をこれまた丁寧に追う。そして帰り道、繋いだ二人の手。…ん？引退の理由って。くたびれてぎこちなく歩く猫も前作からか。
