ジェイコブ

ビバリウムのジェイコブのネタバレレビュー・内容・結末

ビバリウム(2019年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

結婚を前提に付き合う小学校教師のジェマと庭師のトム。マイホームを探しに、ある不動産業者を訪れた二人は、どこか不気味な雰囲気を持つ男マーティンに理想の宅地としてヨンダーを紹介される。マーティンに半ば強引に案内されて行った先は、全く同じ家が立ち並ぶ奇妙な住宅街だった。家の内見が終わりに近づいた頃、マーティンの姿はどこにもなくなっていた。帰ろうとする二人だったが、いくら車を走らせても、ヨンダーから出ることができない。途方に暮れる二人の前に、段ボールが届けられる。そこには、赤ん坊と共に「育てれば解放する」とメッセージが添えられていた……。
何者かの差し金で、住宅街で遭難させられた男女が、赤ん坊を渡され、育てさせられる物語。
ビバリウムは飼育、展示用の容器という意味合い。動物園に突然入れられた動物のように、出ることのできない空間で、日々の食事を与えられる代わりに、退屈な日々を子供を育てながら過ごす。静岡にある日本平動物園で、「ヒト」という誰でも簡単に入れる記念撮影用の檻があるのを思い出した笑
最後まで「誰が何のために?」は明かされず、モヤモヤする気持ちに加え、気味の悪い色使いと観る者が確実にストレスを感じる音で、鑑賞後の徒労感がすごい。最後まで見て理解できたのは、これは「人生」を描いた映画なのだと言うことだ。マイホームを探したり、今後の人生の青写真を思い描いている時が実は一番幸せで、マイホームを手に入れ、結婚した後で待っているのは、繰り返す毎日に食べて生きるためだけに生活する日々。大きくなるにつれて分からなくなる子供、その子が大きくなったら、自分達は用済みとばかりに追い出され、身体を悪くした夫(妻)を介護する。誰が決めたか分からないが、とりあえず従う。周りもそうしているから。と、ここまで考えたら、製作者はかなりひねくれた人なんだろうと思えてきた笑。終始救いがないため、気が沈んでいたり、鬱状態の時など、見るタイミングを間違えると最悪な気分になる映画である。
ヨルゴス・ランティモスを思わせるような理不尽な世界観で、世にも奇妙な物語のような絶妙な後味の悪さが好きな人にオススメ。