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ビバリウムのhynonのネタバレレビュー・内容・結末

ビバリウム(2019年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

ファンタジックで、寓話的で、意味深で。

観終わっても、真相はよくわからない。
結局、誰が何の意図でこんなことを?
子供の正体は?

子供は人間じゃなさそうだから、宇宙人か、ヒューマノイドか、悪魔か…
何だか知らないけど、そこはたぶん重要じゃないんだろう。

観ていくうちに、この映画は非現実的なSFファンタジーの形をとりながらも、現実の結婚生活とシンクロする部分があることに気づく。

たとえ心の準備ができていなくても子供は突然やってくるものだし、やってきた(産まれてきた)からには育てなければならない。

子供がわめき叫ぶのは日常茶飯事だし、子供が親の口ぐせを真似ることも、夫が好きでもない仕事に没頭して疲弊していくことも、たまにはひとりになりたいと思うことも、親が子供を理解できないことも、味気ない毎日も、全部、よくあることだ。

男は「ここは地獄だ」と言う。
女は「解放して」と言う。

結婚して家を買ったら、子供ができたらそれで幸せになれる、なんて幻想。
家(家庭)は単に買うものではなく、時間をかけて築いていくもの。

最大の問題は、物質的な「家(house)」は手に入ったのに、ふたりともこの家こそが我が家(home)だ、と思えなかったこと、homeに変えようとしなかったこと、最後まで子供を愛さなかったことだと思う。

ここにいる(生きている)意味や理由なんて、求めてもしょうがない。
人間も鳥と同じで、自然界の一部に過ぎない。
自分の意志とは無関係に生まれてきて、子孫を残して、死んでいく。
「それが自然というもの」

どうせ抜け出せないのなら、意味も理由もわからないのなら、ふたりはただあの家で楽しく暮らすべきだったと思う。
いまそばにいる人と向き合って、いまこの生活をよりよく楽しく生きればよかったと思う。

そうやって生きることで、最期になってようやく、「ああ、自分の人生には意味があった」と思えるのかもしれない。

メッセージ性は強いけど、笑えなかったうえに展開が単調で、面白さはいまひとつだったかな。
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