終始不気味だが、あの綺麗な水色の家、そしてシンメトリーすぎる住宅街のせいか、シンプルにまとまった印象。
マイホームを夢見るカップル、トムとジェマ。
2人は、とくに計画している訳でもないが、ふらっと不動産屋さんに立ち入る。
押し売りのように、ヨンダーという住宅街に案内される2人。
そこは、水色を基調とした、全く同じ家がずらっと立ち並んでいる。
案内された一室に立ち入る3人。
トムとジェマがああだこーだ言いながら内覧をしていると、いつの間にか不動産屋のマーティンはいなくなる。
2人は呆れ、帰ろうと車を走らせるが、出口にたどり着くことはなかった。
屋根に登るトム、見えるのは、まるでゲームのような、この住宅街とCGのような空だけだった。
太陽を目指そうと歩いたが、出口はなかった。
日用品や食料は、ダンボールで毎日届けられる。
まるで、空から降ってきたかのように、誰もいないのにダンボールは必ずあるのだ。
トムは家を燃やした。
翌朝、家は綺麗に元通りではないか。
家の前にはダンボール。
中には生後1ヶ月だろうか、男の赤ちゃん。
"赤ちゃんを育てれば解放する"などの文字も。
2人は、育てたくもないだろうが、共存するしかなく・・・
赤ちゃんはどんどん成長した。
小学校くらいになった。
毎日奇声を発する子供、痴話喧嘩をまるでロボットのように復唱。
2人は気が狂い、精神がおかしくなった。
トムは子供を殺そうと、何も与えずに車に閉じ込めたが、ジェムは子供を助ける。
トムは、庭に穴を掘り始めた。
毎日毎晩掘り続けた。
ジェマは時折母親らしく子供に接したが、奇声をあげたり、かえるや爬虫類のように進化しそうな姿を見て、やはり異常だと確信したのだろう。
子供も成人した。
穴がかなり深くなった時、そこにはミイラ化した遺体が土に覆われていた。
必死に這い上がりジェマを呼ぶトム。
ジェマはトムに走りより、死にそうなトムの最期の言葉を訊く。
トムが息絶えると、遺体を入れる袋を投げ捨てる子供。
声も出ないくらいに泣きわめくジェマを横目に、あっさりと遺体を袋に入れ、トムが掘った穴に投げ捨てる。
ジェマは子供を殺そうと斧を持ち追いかけるが、不思議な穴に入り、幻覚を見る。
今までの住人の、苦痛な叫び。
無惨な死体。
ジェマもようやく死を迎える。
トムのように袋に入れられるジェマ。
『家が欲しかった。それだけなのに。私はあなたのママじゃない』と言い残すジェマ。
「あっそ」と袋を閉める子供。
子供は遺体を捨て、あの不動産屋へ。
年老いた案内人。
トムとジェマを案内したマーティンだ。
彼は死んだ。
彼を遺体袋に入れ、彼のバッジを胸につけ、椅子にすわる子供。
・・・
なるほど。
そういうサイクルだったのか。
監督のインタビュー記事を見て、現実でマイホームを買ってから揉めた夫婦もこんな感じなのかも、と思いながら観ていた。
トムが穴を掘る姿は、ローン返済地獄の誇張のようだという風にインタビューで語られた監督。
確かにな~と。
トムの台詞が一句、深かった。
『君がいてくれればそこが"家"なんだ』
それとは対照的だったジェマの、
『家が欲しかっただけなのに』
なかなか深かった。