すずす

宇宙でいちばんあかるい屋根のすずすのネタバレレビュー・内容・結末

3.4

このレビューはネタバレを含みます

次回の朝ドラの主役として注目が集まる美少女・清原果耶を前面に押し出し、『新聞記者』で若くして日本アカデミー賞を受賞した藤井道人監督のファンタジー風の家族ドラマ。愛すべき佳品である。

お隣の大学生・亨に恋する中学生のつばめ(清原果耶)。父と母は今、妊娠中、一見、何不自由ない家庭に見えるがつばめの心をチクチクと刺していた。ある夜、つばめは書道教室のビルの屋上で、派手な装いの老婆(桃井かおり)と出逢う。つばめは老婆に悩みを打ち明けると、自由気ままな老婆は恋の仲介役になってくれた。老婆に勇気をもらったつばめは、自分を捨てて家を出て、絵描きとなった実母に逢いに行く決意をする――。

何と云っても、映画のポイントはアミューズ所属の清原果耶の存在感。昔ならば「三井のリハウス」がぴったりの良家のお嬢様風で、やや文学少女風の趣きがあるところは、デビュー当時の牧瀬里穂を思わせる。エンディング主題歌の歌唱も素晴らしく、透明感があふれ楚々とした風情は今どき珍しく、大器の予感が漂っている。敢えて云うなら、庶民にはやや高嶺の花的なつまらなさも否めない。

藤井監督の個性も発揮されていて、空から見下ろした街並みの屋根、屋根、屋根の美しい風景や、水族館でのクラゲの水槽前の場面など、無機質な映像が得意の監督ならでは。しかし、俳優の扱いにも、時に無機質な感じに思える箇所があり、温かみにかけるキライがある。『新聞記者』にも似た冷たい映像は、正直、この少女と家族の題材にはマッチしていない気もしないではない。

しかし、桃井かおりが夜空を舞うCG場面には、制作会社ロボットの先輩監督を思わせる確かなセンスがあり、30代にしてこの完成度、次回作『ヤクザと家族 The Family』にも期待が高まる。
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