高校時代のある種の絶対的ヒーロー佐々木
その圧倒的な存在感に惹かれる石井悠二
悠二は高校を卒業しても夢や仕事そして恋愛と大人になりきれない中で過去と現在を行き来する
悠二だけじゃなく一緒に過ごした多田や木村という友人も含め各々の登場人物に嘘くささがなくてストレートな物言いや立ち振る舞いが多い
佐々木自体の生命エネルギーで周囲をどんどん巻き込んでいく
映画はその力強さがひたすら表現されてる
一方で佐々木自身も1人の人間として父親との微妙な距離感や関係性に悩んでいる
佐々木のふとした時に魅せる独特の間や寂しそうな表情や影を悠二も感じている
>悠二、やりたいことやれよ。お前は大丈夫だから。堂々としてろ。
その誠実な言葉に背中を大きく押されて悠二は広い世界に飛び出していく
悠二は佐々木のバカやってる姿の裏側にある誠実さと真っ直ぐな姿勢を尊敬してる
悠二が大人になってボクシングをかじったのも佐々木の汚い部屋で一緒に観た「チャンピオン(1949)」の光景が目に焼き付いてるからこそ
喜怒哀楽が共存するあの高校時代の空気感が妙にセンチメンタルな気持ちにさせられる
チャリを全速力でトばして佐々木はいつの間にかチャリを降りて全速力で走って勝負する
あのバカさ加減にこそ魂がこもった青春の1ページを垣間見る
後半 大人になってパチプロで生計を立ててる佐々木と曖昧な形で役者をし続けてる悠二の邂逅において いつまでも あの頃のままの佐々木がそこにいたことで悠二はまた背中を押される
苦しみ哀しみを乗り越えて大きな一歩を踏み出して希望を見つけるために悠二が舞台のステージに上がっていく姿は覚悟を決めた男の顔をしてる
テネシー・ウィリアムズの戯曲「ロング・グッド・バイ」のセリフから一気に駆け抜けるラストは観た者の記憶にずっと焼き付く
俳優 藤原季節 が魅せるあの表情と全身の表現は唯一無二
「佐々木コール」があってエンターテインメントとしてエンドロールを迎えるあの熱量と衝動で駆け抜けたこの映画に拍手を送りたい