いろどり

大海原のソングラインのいろどりのレビュー・感想・評価

大海原のソングライン(2019年製作の映画)
3.5
オーストラリアのアボリジニの「ソングライン」という思想に基づいて、かつて同じ言葉や音楽でつながっていた島々の歌をもう一度集結させる!という音楽プロジェクトのドキュメンタリー。ブルース・チャトウィンの著作「ソングライン」で知ったソングラインの概念は、アボリジニが道行く様々なものに歌いながら名前をつけて世界を創っていったというもの。特に知らなくても今作を楽しめる。音楽は感じるもの。

マダガスカルのヴェゾ族のラップがカッコ良かった。
「森の動物を殺す連中に言いたい
動物たちが消えている
この島が楽園なのは彼らのおかげ
だから守らなくちゃ」
静かに熱く環境保護を訴えるパンチラインはクールでドープ。
そこに他の民族の歌や音色を乗せて1つの曲にしているのは、監督のミックス?
とてもカッコ良い。
他にも太平洋、インド洋の島の少数民族たちが奏でるメロディーや歌を合わせて1つの曲にしているようだけど、監督は音楽プロデューサーやDJの才能があるのでは。と思って調べたら、やっぱり監督は音楽プロデューサーでもあった。

台湾に始まり台湾で終わる。
オーストロネシアと呼ばれる南島語族が存在していたことを始めて知った。台湾の先住民族が起源で、オセアニアからマダガスカルと広域に居住していたらしい。島々の歌や音色の壮大なアンサンブルは、かつての1つの語族の魂を感じさせる。波や風を感じるリズムもビートもラップさえも違和感なく1つになれるのは、監督のミックスの才能だけではなく、共通の祖先に導かれたものなのかもしれない。
いろどり

いろどり