リーアム兄さん

グッバイ、レーニン!のリーアム兄さんのネタバレレビュー・内容・結末

グッバイ、レーニン!(2003年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

【好きなセリフ】
アレックス「未来は僕らの手の中で不確かだが輝いていた。」

東西ドイツ時代、宇宙飛行士を夢見るアレックス(ダニエル・ブリュール)は母親のクリスティアーネ(カトリーン・ザース)、姉のアリアネ(マリア・シモン)と暮らしていた。クリスティアーネは夫であるローベルト(ブルクハルト・クラウスナー)の西ドイツ亡命後、社会主義に傾倒し、東ドイツの生活改善について政府に陳述書を提出、ついには表彰されるまでになる。しかし、アレックスが自由主義を掲げるデモに参加しているのをみてしまい、心臓発作を起こし、8ヶ月の間意識不明になる。そのうちに東西ドイツは統一。世界が大きく変わったのだが、医者から次また大きなショックを与えたら命が危ないと伝えられていたアレックスは、母親が意識不明になっている間何事も変化がなかったよう、東西ドイツ統一後も東ドイツの生活を続けるようになる。

ドイツ映画で良く扱われるテーマである「歴史・政治」。基本的にはダークな内容になるジャンルではあるが、この作品は笑いに走ることなく、適度なコミカルさで東西統一後のドイツを描いている。
統一を待ち侘びていた若者や東ドイツの人々がいる一方で、統一後は「東ドイツ時代はよかった」と懐古する人々もいる。そんな中であたかも東ドイツが存在し続けているように統一ドイツで生活していく様子を見ることで、国としては統一されているものの、まだまだ分かれている人々の心をうまく表現している映画だった。
統一される前までは教師や医者などある程度の立場があり、国のために仕事をしてきたのに、統一されてしまいその立場や職を失った人たちの絶望感といったらとてつもなかったのかな、と感じた。
今であれば統一できてよかったと思うかもしれないが、当時の人たちにはそれがわからないだろうし、国の成り立ちは難しい…

もう一つのテーマとしてあるのが「愛」。
アレックスの母に対する愛、アレックスとアレックスの恋人ララとの愛、クリスティアーネのローベルトへの愛。形は違えどさまざまな愛を描いていて、とてもほっこりした。
ララを演じた若き日のチュルパン・ハマートヴァがとても可愛くて、母への愛が深い+東ドイツ生活再現に没頭=彼女はできないっていう構図が普通だと思うのに、アレックス羨ましすぎる…
恋を拗らせた思春期男性を描くのがお得意のドイツ映画のはずなのに…

ララだけでなく、アレックスの友人で東ドイツニュース映像を編集で作り続けたデニスや東ドイツ初の宇宙飛行士でのちにタクシー運転手になるイェーンなど、個性豊かな登場人物が多いのもこの映画の魅力。

大学で西洋史(特にドイツ近現代史)を学んでいる(た)人にとってはもちろん、基礎知識が少ない人にも楽しめる内容になっているドイツ映画でも最高の映画だと思う。
社会主義テーマの映画を資本主義の権化であるアマプラでみるという皮肉を感じたい人はぜひ!