ひれんじゃく

グッバイ、レーニン!のひれんじゃくのレビュー・感想・評価

グッバイ、レーニン!(2003年製作の映画)
4.5
 突然国の中に壁ができて突然分断された様を目の当たりにした少年が、そういうちっぽけな空間的隔たりが一切ない宇宙へ飛び立った人のインタビューを見ているシーンに始まり、母親の灰を空へとばら撒くシーンで終わる。スタートと終了があまりに美しい。なんとなく宇宙を絡めてきてたのは自分達家族を引き裂いた壁や思想や政府やなんやらに対する鬱屈と、それらが一切ない広大で自由な空間への憧れが詰まってたからなのかなあとか思って勝手に泣いた。

 みんな優しくて胸を撫で下ろしたし主人公の同僚がいい人すぎる。そしてこういう目線で東ドイツという国を見たことがなかったので圧倒されてしまった。
 東ドイツに対して唾を吐きながら西に行った人もいれば郷愁の念を掻き立てられる人もいるんだなあ。もう存在しない国、だけど母親との思い出がたくさん詰まった国、その国を自分の手で終わらせた時は思わず嗚咽してしまった。東西ドイツと聞くと「1つの町を壁で分断するなよ…」と今まではげんなりするだけだったけど、「もしかすると東ドイツが急に消し飛んでしまったふるさとだと感じている人もいたのかもしれないなあ、諸手を上げて統一を歓迎した人たちばかりではなかったのかもしれないなあ」とふと思いを馳せるようになった。ドイツ語ではなくて英語で別れを告げている部分も「清々しいけど、どこか寂しさが残っている」ように感じられたり。
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