TaiRa

逃げた女のTaiRaのレビュー・感想・評価

逃げた女(2019年製作の映画)
-
3時間でも30分でもいい内容を77分で作るみたいな適当さが好き。何の話してるか頭に入って来ないけど。

キム・ミニが知人女性に会いに行って会話していると第三者の男性が割り込んで来てその都度適当にあしらう、というのを三度繰り返して終わる。ミニマルというかLo-Fi Hip Hopみたいなチルさがあった。シーン終わりに流れる謎のLo-Fiな曲も良かった。示唆的なタイトルと主人公の置かれた状況(不在の夫の存在感)など、説明なしで展開されるのが面白いっちゃ面白いが一回観て何か分かるって感じでもない。女性たちと男性訪問者の並行線な会話。互いの主張を言うだけ言ってどちらも全く歩み寄らない。そんな議論なぞどこ吹く風な猫が尊い。あの猫は偶然いたので急遽撮影したらしい。よく一発撮りで成立したと思う。ホン・サンスのズームにも堂々たる佇まい。いつの世も猫は奇跡を体現する高潔な生き物である。主人公の背景は最小限に語って、反復する行動で表現。先輩と第三者の対照的なやり取りをモニター越しに二度観察し(2回目のモニターを用いた“切り返し”は良かった)、部屋から窓の外を二度眺め、映画館のスクリーンを二度見つめる。彼女の眼差しがそこから何を捉えたかは分からない。映画に映る海と満潮になれば消えそうな小島は、シーンの合間に映される山々に比べて何を意味するか。閉塞か開放か。画面に映る男性で唯一排除されないのは、最前列で映画観てる観客だけで、およそ猫と同じ扱い。
TaiRa

TaiRa