昼行灯

野獣の青春の昼行灯のレビュー・感想・評価

野獣の青春(1963年製作の映画)
4.3
前期清順の傑作のうちの1つだろこれ😭

どピンクマジックミラーを用いた半地下のヤクザの溜まり場とキャバクラ?の境界の演出が面白い。キャバクラ側からは鏡で何も見えてないけど、ヤクザ側からは窓になっていて、キャバクラがヤクザのもの、ヤクザの息がかかっているということを視覚的に表している。しかし、キャバクラ側にいる宍戸錠はヤクザよりも高所におり、なおかつ女を大人数買っていることから、彼の実力の高さは暗示されている。その宍戸錠がヤクザに連れられてではあるが、半地下の溜まり場に足を踏み入れた瞬間、ヤクザ側が劣勢になることは確定される。なぜなら、キャバクラ側にいた宍戸錠が半地下に降りたとき、彼はもうヤクザ側の事情を見通すことができるからだ。

↑のマジックミラーの蛍光ピンクもそうだが、この作品は色遣いがほんとにギラギラしていて助かる😭🙏
冒頭モノトーンのなか花が赤く色づいているショットのあと、始まるカラーのフィルムは一気に世界が開けたようで物語が始まったのを決定づける。その花の色づきは結末の椿の赤さで回収されて、それもキマっていた。
他にも川地民夫と宍戸錠が初めて会ったカフェー?の青い内装や、そこに置いてあった赤白のバイカラーの(黒)電話とか清順らしい色遣いがたまらない。サディストの家の外の風景が黄色い砂嵐でまみれてるのとか、相討ちで死んだことにした家のランプの蛍光ピンクな感じとか、、。
音楽もここぞというアクションシーンに爆音で挿入されるのがテンポ良くて、高揚感を誘う。

あと、関係ないけど車の運転の荒らさとか殺し屋達のコートとか、街中の風景とか当たり前に60年代を感じたんだけど、それが当たり前に存在していて、当時はこれらをレトロスペクティブで捉えることはなかったんだと思うとたまらなくなるよな…当時はむしろ最先端の文化だったんだろうな

お決まりの横滑りショットとか、フレーム内フレームとか、一点透視図法を意識した構図はやはり殺し屋の監視する/される視線を表してるのではないかな。横滑りについては、殺し屋の網のように巡らせる視線が鑑賞者の視線と同一化している。フレーム内フレームは、殺し屋の見る視線を鑑賞者は第三者的に捉えるか、または鑑賞者が見られているように感じられるような効果がある。一点透視図法も、殺し屋がターゲットを消失点に据えて注視している視線と鑑賞者の映画を観るという視線に同一化しているように思える。
あと、視線で言うなら序盤の薬中の女が見た幻覚が面白かった。それ繋がりでいえば、車の中から銃で打った時に全員同じ顔に見えたのはなんだったんだろう。

殺し屋らしく無表情な宍戸錠が、殴られる際ちゃんと痛がってるのが人間味あってよかったな~あと、三枚目目指して頬に詰め物してても普通にイケメンなのは草
冒頭に見られたガラス越しに殺し屋達を下方から激ローアングルで撮るショットもかっこよかったわね

2023/06/12 2回目
マジックミラーも映画もリアプロジェクションも平面性へと集約される。もちろんスクリーン自体の平面性もある
とはいえディープスペースがない訳ではなく、あるからこそ平面が特徴付けられる。
パンパンの息子をいじるのは当時としてもどうだったんだ?
昼行灯

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