たぐち

野獣の青春のたぐちのレビュー・感想・評価

野獣の青春(1963年製作の映画)
3.9
面白い!!
宍戸錠相変わらずのかっこよさ。
清順節はもうかなり全開になっている時期。冒頭とラストでモノクロの画面の一部に施された着色、冒頭のキャバレーっぽい場所のガラス一枚防音で隔てた奇妙な空間、激昂する小林昭二の後ろの謎に風が荒れ狂う黄色い砂浜、回想シーンの荒れ狂う海と美しいライティング。ロケーションやセットの美しさが、今まで見てきた作品の中でもかなり印象的だった。あとライティングが急に変わるシーンがかっこよかったな。
車に偽物ダイナマイトを投げ込むシーンや、主人公の相棒が人妻に発情してしまうシーンなど、乾いたコメディ感も強かったし、後半のヤクザ2組の合戦からの屋敷の爆破など、ハデさもある。
プロットがかなり複雑で、ところどころ混乱することがあったのに対し、作品のテイストはかなりポップであった。
銃撃戦が多数出てくるが、途中までは誰が銃をどこに向けるかの政治的やりとりが描かれ、登場人物たちは慎重に立ち回り中々引き金を引こうとはしなかった。しかし終盤の撃ち合いだけは宍戸錠演じるジョーが自分を慕っていた相棒を反射的に撃ってしまう。その手前のドタバタっぷりも含めて、終盤に向けて秩序が崩壊していく印象があった。
川地民夫演ずる組長の弟にまつわる逸話がラストで重要な意味を持つ展開は、ハリウッドのアクション映画っぽいなと思った。
清順好きならひたすら楽しい、いつもの清順が味わえる作品。
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