尿道流れ者

野獣の青春の尿道流れ者のレビュー・感想・評価

野獣の青春(1963年製作の映画)
4.2
二つのヤクザを欺き、友のために復讐をする男を描いたハードボイルドアクション。大藪春彦原作なので清順映画らしからぬ意外な結末やそこにいたるまでの展開は緊張感たっぷりで、ヤクザ映画というジャンルをきっちりまっとうしている。
しかし、清順映画としての楽しみもしっかりと入っており、その演出や舞台設定の違和感が効果的に観る者の感性を刺激する。
スクリーンの裏やキャバレーのマジックミラー越しに作られたヤクザの事務所、飛行機の模型が一面に散りばめられた部屋など現実感と空想が入り混じっていて面白い。ヤクザのボスが女を鞭でいじめながら2人が転がり落ちた窓の外はなぜか西部劇風の荒野だったりと、常に夢か現か分からない空間に登場人物がいて、そこを行き来する。
鈴木清順の良いところはこういった変な演出が計算ずくというよりは天然な部分でやってるように感じさせるところだ。だってこうした方が面白いじゃない、映画なんだしというくらいのニュアンスで。だから、あざとくもなく深くもなく、エンターテイメントとして映る全てを楽しめる。滑稽さや可愛さ、優しさなどは計算があれば、人は敏感にいやらしさを感じてしまうが、そういった嫌な感情を持たずに全て笑って受けとめることができる。天然の美とでもいうか。

ハードボイルド映画としても完成度は高く、銃撃戦は少し安っぽいが、唐突な暴力や宍戸錠の立ち振る舞いは色っぽくてとても好き。