スッキリして終わる物語でなく、画面も暗いので好き嫌い分かれそう。
でもわたしはかなり好きです。
東京国際アニメフェスティバルで鑑賞した際、上映後にチェン・トン監督のインタビューが流れていた。
そこで彼が言っていたのは、
「世界は変わらない。しかし “世界を変える”という意思をもち続けることが重要。それが映画を作り続ける意味」
ということだった。
本作にも登場する「妲己」は、国を傾けた“悪女”の代表的存在として今なお語られる。
けれど権力をもつ女性は一般に男性よりもバッシングを受けやすく、“悪女”という見方のなかには、ミソジニー(女性蔑視)的なまなざしも含まれていると思われる。
それと“虐げられし種族”とを接続して、
「誰一人として虐げられていい存在はいない」
「権威には抗え」
とはっきりと訴える本作は、非常に今日的な話としても受け取ることができる。
これが中国の作品であることの感慨もさることながら、どの国籍のどの国に暮らす人間にもアピールする普遍的なメッセージだと思い、胸が熱くなった。
弱き者の声に耳を傾けることの意義を訴える、不羈の物語だと思った。
ビジュアル面でも、小九(シャオジォ)と四不相(スーブシャン)のキャラデザが天才的で、殺伐とした世界観に華を添える。
監督は「中国アニメには予算も技術もないけど熱意はある」とも語っていて、中国アニメ・中国映画の熱量を体感できる。
もし日本で一般公開されたとしてヒットするかは分からないけれど、ぜひ評価されてほしいと思う作品だった。