うどんよりそばやろ

アーニャは、きっと来るのうどんよりそばやろのネタバレレビュー・内容・結末

アーニャは、きっと来る(2020年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

結果として目的を果たしたジョー。
失ったものは友人。これから彼は伍長やドイツ人をどう捉えるのだろう。「ハンマーをいくら振るっても、伍長が奴らの仲間であるということへの怒りは収まらなかった」。幼いジョーが抱く人への愛情や友情、そして怒り。

伍長は善人だろう。なのに正しいと思うことに迷わないジョーと違って、組織の中の自分と葛藤して行動に一貫性が無かった。ベンジャミンとレアを逃がすとかが王道展開として有り得たけどそれはなく。彼も結局「自分が収容した後に彼らがどうなるか」に向き合うことは辛すぎて出来なかったのか。中尉に至っては命令するだけで、彼らの行き先を「私には関係ないことだ」と答える。
中尉は悪人で伍長は良い人!という見方もできるけれど完全に両者に違いがあったかと言えばそうでも無い。中尉は教会で子供が歌うのを見て娯楽として心から楽しめて、伍長は自分が侵略者であることを忘れきれなかったのかその場を抜け出した。確かにこの行動や、葛藤の有無に違いがある。それでも、実際にジョー達に起こした行動は無い。目を瞑った部分はあったけど移牧のとき山の上に来たし、あの子が撃たれても行ってしまった。彼は他のドイツ兵とは明らかに違う考えを持っているのに。それがリアルだった。
時代が違えば一緒にワシを眺め続けることが出来て、ジョーも彼が去るならば寂しがったはずなのに。

ジャン・レノもノアシュナップもいい演技をする。児童文学がベースであり、演出もそれに準じた部分はある。けれど勧善懲悪な展開では無いため、たくさん考えることができた。自分ならどうするんだろう