映画漬廃人伊波興一

アーニャは、きっと来るの映画漬廃人伊波興一のレビュー・感想・評価

アーニャは、きっと来る(2020年製作の映画)
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普段映画をほとんど観ない友人が言っていた。
(普通に感動した)と。
その言葉に何の偽りもなかった。
普通に感動する。と同時に次なる胎動が微塵も感じない、と。
ベン・クックマン
『アーニャは、きっと来る』

南フランスの風景は美しい。
興趣が無いほど美しい。
それは映画画面というよりむしろ絵葉書のような美しさとも言うべきか。

羊飼いに混じったユダヤ子女の逃避行はルビッチの『生きるべきか死ぬべきか』、ナチスの民家訪問はタランティーノの『イングロリアル・バスターズ』、良心的な党員の配置はスピルバーグの『シンドラーのリスト』、極めつけはフランク・ダラボンの『ショーシャンクの空に』を想わせるラストシーンなど、過去のさまざまな映画へのオマージュというよりも単に俎上(そじょう)に載せている芸の無さに好感抱いてしまいます。

タイトルと締めくくりを併せれば直ぐに教条的だとわかる『アーニャは、きっと来る』という映画を観るべきか。
やはり私は観るべきだと思う。
特に若い方々は。
こういう映画の経験を通して私たちは自家撞着の罠を知り得るのだから。