グラノーラ夜盗虫

なぜ君は総理大臣になれないのかのグラノーラ夜盗虫のレビュー・感想・評価

4.3
地盤・看板・カバンなし、美容室の息子が、地元の有力者(父親は政治家・母親は地元新聞・放送の長)の息子(平井デジタル庁長官)と戦う、胸熱な少年漫画のような話。最初は半信半疑で見始めたが、問題の本質を洞察する能力と、それを自分の言葉で語る小川氏のあり方、そしてなにより自身の迷いや悩みも含めて率直に語るその正直さに魅了される。現在の日本政治で権力を掌握するためには、まず権力への強い欲望とそれに向けたしたたかさが必要不可欠(小池百合子氏がそれを体現)だが、それが彼の美徳の裏返しであることがもどかしい。

個人的には家族(特に娘)からここまで協力を得ることができるのがすごい点だと思った。外面はいくらでもよくできるが、ここまで家族から慕われている点が小川氏の人徳の高さを表しているようだ。

他に特筆すべき点は、慶應義塾大学教授の井手英策教授のスピーチの素晴らしさ。主に政治家のブレーンとして働いているそうだが、彼自身政治家にとても向いている気がした。

「なぜ君は総理大臣になれないのか」、最初は大島監督からの厳しい小川さん自身への問いかけかと思うが、映画を通してみると、正直者が権力を握ることができない、世の中や日本政治のあり方への問いかけであることがわかる名題。今年の衆議院選、香川1区を注目したい。