むさじー

海辺の家族たちのむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

海辺の家族たち(2017年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

<崩れかけた家族の再生物語>

南仏の海辺の家に、父との最期の日々を過ごすため三人の子どもたちが集まった。若き日はこの地で青春を謳歌した兄妹たちも人生の黄昏を迎え、かつては栄えた海辺の別荘地がうら寂しい漁村に変わるように、彼らの人生と重なって映る。
互いに打ち解けることなく、それぞれが胸に秘めた過去を持って憂鬱で重苦しい時間を過ごすが、徐々に過去の確執が明かされていく。そして思いがけない事件に遭遇して、たそがれた人生に希望が訪れ、未来が開けてくる。
海辺の町の少し湿り気のある空気感、ゆったりと流れる時間、じんわりと沁みる家族の再生物語だった。
ただ一つ理解し難いのが隣人老夫婦の自死。生活困窮に直面しても子どもの世話になりたくないという心情は理解できるものの、自死という選択は遺族に心の傷を残すだろうし、これが大騒ぎにならずすんなり受け入れられるというのも不思議な世界のように思えた。そもそも、この家族の物語に必要なエピソードだったのか、これで何を伝えたかったのか疑問でしかない。
フランスの「尊厳死、安楽死」関係の動きをみると、それまで安楽死反対の声が強かったフランスで2016年、末期患者に対する「ソフトな安楽死」を認める法律が制定されたとのこと。その論議を踏まえたエピソードの挿入ではないかと推測するが、登場する老夫婦は末期患者ではないし、唐突にして安易な描き方のように思えた。
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