アニマル泉

エルのアニマル泉のレビュー・感想・評価

エル(1952年製作の映画)
5.0
ブニュエルの主題は「高さ」だ。本作も随所に階段、高台、螺旋階段、鐘塔が印象的だ。特に鐘塔はヒッチコックの「めまい」が想起される。「めまい」は高所恐怖症の映画だった。フランシスコ(アルトゥーロ・デ・コルドヴァ)が階段の手すりを深夜に叩きまくる場面は恐ろしい。
本作はセリフが極端に少ない。冒頭の教会の洗足式の足のエロスを介したフランシスコとグロリア(デリア・ガルセス)が出会う場面は、表で「フランシスコ」と友達に呼び止められるまでセリフが一切ない。教会でグロリアの後ろにフランシスコが座るツーショットは素晴らしい。
本作はフランシスコの「妄想」の映画だ。グロリアの不貞、自分が笑われている、という妄想がエスカレートしていく。部屋を覗かれていると確信するフランシスコが何の躊躇なく鍵穴に針を突き刺すのは怖い。もちろん「アンダルシアの犬」の剃刀で眼球を切り裂く戦慄のショットを思い出すからだ。教会で神父、参列者全員が笑う妄想のショットもブニュエルらしい。
フランシスコが階段をジグザグ登るのが印象的だ。ラストカットも修道院の道を奥へジグザグ去っていく。
撮影はガブリエル・フィゲロア。音楽はルイス・ヘルナンデス・ブレトンでヒッチコックの作品を感じるメロディーだ。
白黒スタンダード、コロンビア。
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