財力もあり、街の人々からの人望も厚い、中年男性フランシスコが生まれて初めてグロリアという女性に恋をしてしまってから詳らかになっていく彼の狂気性。異常なまでの嫉妬心。
街の誰も、彼のその部分は知らない。
これ、フランシスコの異常性が実際の精神分析の講義で使われたくらい、偏執狂なまでの嫉妬心に焦点がいきがちだけれど、グロリアの側も理解の難しい部分はある。
それは、幾たびにもわたる暴言や暴力によって、もう別れたらいいのに…観てる側にも思わせるのに、なぜかグロリアは結局別れない。
それどころか「彼も憐れな人なの」と曰う始末。
あれほど酷いことをされて、なぜそんなふうにケアフルでい続けられるのか。
いろんな視点で見てみると、ブニュエルが人間を描くときの着眼点の深さにも驚かされる作品。
作中、嫉妬心から寝られずにフランシスコが自分の屋敷内の階段をジグザグに歩くシーンと、ラストの精神病を矯正させるための教会で「もう錯乱はしません」と言ってから、庭をジグザグに歩いていくフランシスコがリンクする演出に、背筋の凍る思いがした。