マチ

二重のまち/交代地のうたを編むのマチのレビュー・感想・評価

3.7
震災の起こった「事実」を語るのは安易でも、被災者たちの「真実」に触れてしまったとき、言葉には戸惑いが生じる。

劇中に登場する若者たちは、受け取った「真実」たちに言葉を失う。自分を介して発する言葉が、「真実」から遠くなったり、着色してしまったりすることに怯える。

「どうしたら上手く伝えられるのか」
その答えは多分「ない」と思う。
当事者を完璧にアドボケイトできると思った瞬間、相手を最大公約数で一般化し、類型的に解釈してしまっているからだ。

この作品は、伝えることの困難さにとても誠実である。フィクションとノンフィクションの境目から、困難さを困難なまま少しも解消しようとせず、正確さよりも、「真実」の濃さや質量をフィルムに定着しようとする。

そのせいもあってか、フィードバックがほかの映画に比べて強く、短い上映時間にもかかわらず見終わったダメージが大きかった。

出来事から見える「事実」は同じでも「真実」は人それぞれに異なる。その違いを的確な言葉にはできないことは、ひとりひとりは尊ぶべき存在だとする証明でもある。
本当はそのことを人物たちの困惑を通じて、作品は語り継ぎたかったのかもしれない。
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