ふぁんたずま

二重のまち/交代地のうたを編むのふぁんたずまのレビュー・感想・評価

3.9
過去にあった出来事とか人々とかの記憶が失われないように、ため込んでいくこと(≒過去の即自的保存??)は、それ自体として重要なものとしてみなすような考え方が、つまり、その記憶が未来の人々に参照されさらには役立てられるかとは否かという次元とは無関係に重要である、という観念が、自分のなかにあるのかもしれない、と思った。過去に生じたことすべてをアーカイブ化することを理想として目指していくような。みんなもそういう考え方をなんとなく持っているんじゃないか、っていう雑な直観がなくもない。

過去を語り継ぐことや、自分が見て感じたものごとを記録するっていうのは一方ではそういう目的に向かっているように思うし、この映画もそうしたことだったような感覚があった。記憶から触発されて生み出された詩や聞き手たちのふるまいを中心にして映画が構成されている以上、記憶をそのまま保存するというよりは、未来の人々が何かしらの可能性へと開いていくことを期待する、他者を前提にする継承こそが主題となっていると考えるのが自然だろう、とは思いながらも(それらは、過去の即自的保存への接近というもちろん失敗せざるを得ない目的への接近が生み出すものとしてとして、目的から外れて生み出される何かとして描き出されているような感覚があった)