Nekubo

狭霧の國のNekuboのレビュー・感想・評価

狭霧の國(2020年製作の映画)
3.5
日本国内でのソフト化も未定のうちに、海外よりブルーレイを輸入して鑑賞。「人形劇×怪獣映画」と聞いては黙って待つことなどできない。

さて、この映画に描かれる物語の舞台となるのは、明治42年の九州は大分である。主人公エイジは母に呼ばれ、故郷である九州の実家へと向かう。そこで出逢うのが実家の蔵に住まわされる盲目の少女タキリ。彼女にはある秘密があった。夜な夜な外に出かけては、山奥の畔に足を運ぶタキリ。その姿を追いかけるエイジは、山奥に潜む怪獣ネブラの姿を目撃する。

実際に大分県竹田市でのロケを敢行しただけあって、リアリティかつ繊細で懐かしい情景を表現したミニチュアワークに胸を打たれる。その中でドラマを紡ぐ人形達。表情の変わらない人形が、映画の力とも言える"表現"によって見事に魂が吹き込まれる。

怪獣ネブラの造型は、嘗ての怪獣映画を手掛けてきた村瀬継蔵が担当し、人形劇でありながら怪獣は着ぐるみによって表現。紛うことなき「人形劇×怪獣映画」である。山奥の畔、狭霧の中から静かなる重みを以って姿を表す怪獣ネブラの幻想的な姿には惚れ惚れする。当然、造型そのものも素晴らしく、咆哮する様の迫力も造型力の賜であろう。

この映画は一貫して幻想的かつ映像美に趣をおいているようであるが、クライマックスでは「怪獣映画」の名に恥じぬ怪獣ネブラの猛攻を拝むことができる。「人形劇」の中の、箱庭の世界を、巨大な怪獣が踏み潰していく。

「怪獣は何を壊すのか?」

これはこの映画のキャッチコピーだが、何を壊すのか?そしてなぜ壊すのか?を自身の眼に焼き付けてほしい。
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