キヲシ

劇映画 沖縄のキヲシのレビュー・感想・評価

劇映画 沖縄(1969年製作の映画)
4.0
こ、これは貴重な興味深い作品。返還前70年頃の沖縄が舞台。ベトナム戦争渦中の米軍基地内の軍艦や戦闘機、爆撃機B52、米兵が闊歩する夜の繁華街(コザ?)、ドルに溢れた商店街のキャッシャー、数千人規模のデモ行進…などが記録されている。が、全編がドキュメンタリーというわけではなく、米軍に接収(窃取!)された土地返還闘争と基地内で危険作業に従事する労働者の待遇改善交渉をドラマとして描く。「土地を返せ」の幟、鉢巻きで、三線とともに土地を奪われた悲しみを歌い、集まった人々が市場の品物やお金を差し入れる。このブルースに思わず落涙。若者たちが集う夜の浜辺で佐々木愛が歌い踊る姿も美しい。特に第一部での寡黙なおばあの葬儀や集会の場面に映る人々は現地の住民に違いない。上手く立ち回らんとする男を演ずるのは名バイプレーヤー加藤嘉。予定地の地図を手に入れ相談する面々は…五輪とか万博にもいるはず。戸浦六宏が米軍将校に、飯田蝶子は混血児を産んだバーのマダムに。志を持った役者たちが低予算ながら気合いの入った演技をみせる。地井武男と混血児ワタルの殴り合いも熱い。が、沖縄についての街頭インタビューでの人々の無関心ぶりは、現代にも続いている。というか、本当に近頃は「美しい国」の「国民」の声がでかくなっていて、誇らしくて泣けてくる。
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