柏エシディシ

悪は存在せずの柏エシディシのレビュー・感想・評価

悪は存在せず(2020年製作の映画)
3.0
死刑制度に翻弄される人々を描く4遍のオムニバス映画。
日本に紹介される映画や世界的に評価される作品がたまたまそうであるのかもしれないが、イラン映画の魅力は、肝心なところは秘して語らず、性急にストーリーを進めず、じっくり観客に登場人物に歩幅を合わせる様に心情をゆっくりシンクロさせていき、真実の瞬間一気に心を掴んでいく、そのサスペンス性にあると思っている。
本作においてはまさにその魅力がギュッと詰まった4遍を各々堪能出来る。

4遍とも、独立した物語ではあるが、死刑というキーワードを中心に緩やかな円環と連続性を感じられる構成と、顛末の行方を観るものに委ねる様な幕引きが見事だ。

人を殺めるという行為が直接的にであれ、間接的にであれ、人間の心にどれだけの影響を与え得るのかという事を静かに、しかし強く訴えかけてくる。
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