イラン映画は、有名なアスガー・ファルハディ監督の作品をいくつか観た程度です。
意外と近代化された都市の風景や人々の生活などは、この作品が批判している死刑制度の非人道性と極めて対照的であり、第一話のエピソードがとてもわかりやすかったです。第二話以降の順番も監督の主張を展開する意味で効果的でした。まさかたった一つのボタン（しかも執行官が一人だけ）で複数人の死刑が同時に執行されているとは思いませんでした。
イランの刑法や刑罰の実態は、ここで安易に言及できるようなものではないので、この作品を観た人たちには、少しでも関心をもってもらいたいと思います。この作品が本国で上映禁止となり、監督が逮捕されて金熊賞の授賞式に出席できなかった経緯などは、日本で十分に報道されていなかった記憶があります。
日本も死刑制度を存続させ、ほとんど情報を開示しないまま、依然として執行を継続している世界的にまれな国家です。この作品が「日本はイランよりまし」という感想で矮小化されてしまうならば、それほど恐ろしいことはありません。
