みんと

悪は存在せずのみんとのレビュー・感想・評価

悪は存在せず(2020年製作の映画)
4.1
ファルハディ監督問題にザワついてるタイミングで久々にイラン映画を鑑賞。

中国の次に死刑執行数が多いイランにおける死刑制度をテーマに4話オムニバス形式で描き、その是非を問う。とても興味深い作品だった。
何処に向かってるのか?何処に着地するのか?とりわけ度肝を抜かれる1話目から、前話、そのまた前話を頭に置きつつ観すすめる感覚、構成が秀逸だと思う。

第1話「悪は存在せず」
ある男の日常を淡々と追っかけるだけ、そしてその延長線上に唐突に訪れる今作のテーマ。完璧過ぎる導入に先ず唸る。そして空いた口が塞がらない。

第2話「あなたはできると彼女は言った」
シュールさを感じて良いものか?悪いものか?主人公が必死になればなるほど、それが際立つと言うか、死刑囚と執行人のツーショットは心情が全く逆に見える。

第3話「誕生日」
恋人の誕生日を祝うために帰ってきた青年兵士だが、政治犯の死により誕生日が葬式になってしまう…
説得力がある台詞と隠喩表現の散りばめが見事だった。
“納得出来ない法律を強要されて何故ノーと言わないの?力は“ノー“の中にあるのよ… “

第4話「私にキスを」
キアロスタみ を感じる風景が広がる。そして車は“MAZDA“。キツネの絡めが絶妙だし、答えを差し出すまでのじらしと第2話と繋がる上手さを感じた。


1話ごとの吸引力がとんでもなく強く最後まで興味が途切れなかった。そしてテーマがテーマだけに余韻が深い作品だった。

やはり侮れないイラン映画、この監督も気になる監督のひとりに加えたいと思う。

因みに今作、イランでは上映禁止を受け第70回ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞も政府から身柄を拘束された監督は授賞式を欠席との事。イラン映画事情、やっぱり闇が深いなぁ…
みんと

みんと