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DAU. ナターシャのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

DAU. ナターシャ(2020年製作の映画)
3.5
ロシアのイリヤ・フルジャノフスキーとエカテリーナ・エルテリが共同監督を務め、「ソ連全体主義」の社会を、15年の歳月を費やして、前代未聞のスケール(1万2000平方メートルのセット、主要キャスト400人、エキストラ1万人、撮影期間40カ月)で完全再現し、独裁政権による圧政の実態と翻弄される人々の姿を明らかにするという一大プロジェクトのもと、700時間に及ぶフッテージ(素材)から映画化第一弾として発表された問題作。
主演のナターリヤ ・ベレジナヤは、本作でスカウトされた新人。
出演者たちが再現されたセットで約2年間、実際に生活して撮影が行われた。
ベルリン映画祭で銀熊賞(芸術貢献賞)を受賞。
原題:DAU. Natasha (2020)

1952年、科学者ブリノフ教授(アレクセイ・ブリノフ)たちが軍事目的の研究を続けているソ連の秘密研究所。
フランス人科学者リュック(リュック・ビジェ)の立会いの下、ある装置を使った奇妙な人体実験が行なわれた後、施設に併設された食堂で、2人のウェイトレス、中年のナターシャ(ナターリヤ ・ベレジナヤ)と若いオーリャ(オリガ・シカバルニャ)も交えて、どんちゃん騒ぎのパーティが繰り広げられ、ナターシャは、リュックと肉体関係を結ぶ(2人は相手の言語が分からず、言葉で意志疎通はできない)。
外国人と寝た彼女は、ソ連国家機関から呼び出しを受け、暗い部屋で、冷酷非情なMGB上級捜査官(ウラジーミル・アジッポ)から、スパイ容疑で虐待的な扱いを受け、"密告者"として国家への忠誠を余儀なくされる…。

"三つ編み"と"ピン"、
"願いを叶える幸せに対し、お金を望む長男、力を望む次男、何もないと答える三男の寓話"、
"ルネサンス"、
"ウォッカとビール"、
"コニャックのビン"

「私たちを追いかけてくる幸せに乾杯…、お互いを嫌ってることに乾杯」

「この質問のために殺さない?」

「これが最後よ、オーリャ 、店を拭きなさい」

スターリン時代の暗部を、一人のウェイトレスの日常を描くことで再現している。
生々しい性描写は賛否が分けれるだろうが、同じく生々しい描写でも、MGBがどのように普通の人間を尋問し追い詰めるかは、平和にどっぷり浸かっている私たちこそ、現実から目を背けないためにも知っておいたほうがよい。
その内容からロシアで上映禁止になったのは当然。
重厚な映像と役者の生の演技…
これを見たら、第二弾以降を見逃す訳にはいかない。
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