Aya

セイント・フランシスのAyaのレビュー・感想・評価

セイント・フランシス(2019年製作の映画)
3.6
#twcn

ある人にとっては終わりでありある人にとっては始まり。

そんな節目のサマーバケーションをだれと過ごすか??

秀逸なタイトル。フランス映画かと思ったw

宗教的パブリックイメージを笑いと涙に変える手管が見事ですよね。

34歳。これといった資格も仕事も夢も恋人もないイリノイ州に住むブリジット。

パーティーで出会った優男ジェイスとはいい感じたがボーイフレンドとは呼べない関係。

ウェイターの仕事をしていたが友人の紹介で6歳の女の子フランシスのナニーとして働くことに。

母親が2人。
1人はバリキャリ風。もうひとりはもうすぐ出産を控えている。
赤ん坊の育児と夏休みの娘の世話に不安がありナニーを雇うことにしたそうだ。

ナニー経験のほぼないブリジットと初めて姉になるフランシスの夏休みが始まる。

郊外に住むヘルシーなゲイのカップルは普通として、自宅の至る所に十字架が飾ってあるからブリジットもわたしも「ん?」ってなったし笑ったよねw

え?

カトリックって同性婚できたっけ?

ちょっとややこしい話なので少し書きますが調べるととても興味深いので是非。

カトリック教会は公式見解として同姓同士のカップル・結婚を認めていない。

型破りなおっさんでおなじみのフランシスコ1世が2013年にローマ教皇に就任した時、同性愛者について言及し「一定の家族である」という見解を示した。

しかし2021年、同性婚について「家族ではない」との公式見解を述べる。

今作が撮影された時期は2018年頃。もちろんブリジット役のケリー・オサリヴァンが脚本を書いたのはもっと前。

つまりこの映画が作られたときのカトリック教会は「同性カップルを認める」見解であった。

そういう経緯があるのか…なかなか興味深い。

で、無事に男の子が生まれてめっちゃ長い名前が付くんですけど私もブリジットも「さすが洗礼名入ってると名前長いな(笑)」って思ったらまだこれから付けるというw

アメリカでの同性カップルが当たり前の時代だからこそ逆手に取った宗教ギャグが効いてていいですよね。

特に子どもが好きでもないブリジットがフランシスのことを"世話をする子ども"というよりは"世話をする人間"って思って接してるの当たり前なのになかなかできないよね。

子どもはできないことも多いし危険もあるから。
ブリジットのいいとこは上記のフランシスとの接し方がフラットなとこですよね。

質問されたら質問し返し、褒められたら褒め返し、怒られたら指摘し返す。
人間関係の根本的なコミュニケーションを見た、と思いました。

どうしても子どもに対しては保護が必要って思ってしまいがちだけど我々が思ってるより立派にひとりの人間よね。
懺悔も聞いてくれるし許しもしてくれる。

神のよう。

フランシスとブリジットの関係を軸に描かれるのですが、ブリジットの私生活でもある大きな出来事が起きる。

歳が近いし色々考えたけどわたしがブリジットでも同じ選択をしたと思う。

ワンナイトの相手で8歳年下のジェイスが癒し系なんやけど、好みの悪っぽいのに引かれちゃうブリジットのあほさ加減…他人だからどうこう言えるけど自分なら似たようなことしそうで「等身大」という言葉がぴったりですよねw

わたしが無宗教だからか同性のカップルについてのギャグより人種的偏見の話より、宗教のギャグの方が屈託なく笑えるし言っちゃえば馬鹿にできる気がするんですよ…そこに弊害はないはずなのに…

自身の考えについても言及してしまった次第であります。

だからこそ中盤の「一言も話すな」のシーンでブリジットと一緒にぶわあ、って涙が出たんやと思う。

だって絶対非難されると思ってたから。

思い込んでたから。

この思い込みはパブリックイメージであり偏見でもある。
わたしもブリジットも。

あの言葉自体にもとても癒されたけど、同時に自分の狭い観念に心底絶望した…業が深い。

「他人を思い込みで判断してはいけない」わかってるはずなのにわかってないってこういう時に思い知らされますね。

くっ!


あの病院でブリジットが本読んでるときの

「ダンブルドアが死ぬ回?」

「…ダンブルドア死ぬの?」

あるあるよね…言っちゃダメ!


日本語字幕:山田 龍
Aya

Aya