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セイント・フランシスのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

セイント・フランシス(2019年製作の映画)
4.4
これはすごく良い映画を見ました!
知ってる俳優や監督でもないけど、女性の体や内面や社会的なことを軽妙に描いていて、それがとても丁寧だし共感できます。
生理や妊娠、避妊、中絶、出産、子育て、人種差別、同性愛差別について描かれているとなるとシリアスになりそうなものですが、重くならないトーンなのが見やすいし、互いに対話しながら、互いを受容し、連帯する女性達がとても素敵で感動しました。

とにかく、女性の出血についてこれだけあからさまに描いた作品を初めて見ました。
でも、これ、生理のある人ならほんとにわかると思う。
生理の度に体もしんどくて、出血の処理もしていかないといけなくて、着るものも考慮したりとか、女性がいつもやってる日常的なことなんだけど、こんなに生理や出血に焦点当たったことってなかったから、すごく新しいと思ったし、それが良いと思いました。

また中絶もかなり具体的に描かれていて、日本では見ることのない経口中絶薬ってこんななんだというのも驚きでした。
家で薬飲んで中絶できるって言ったって、そんなお手軽なもんじゃなく、心身への負担てやっぱり大きくて、ボーイフレンドも一生懸命向き合ってくれて優しいんですけど、それでも実際に痛みを伴う女性との違いというのはどうしたって大きくて、その辺りの男女間でのズレも細やかに描かれていて、何とも言えない気持ちになります。

主人公のブリジットがあまり深刻ぶらずに淡々としているように見えて、誰にもこのことを言えずにいる事、それを受け止めてくれる人がいて、自分の選択を責めたり否定したりされずに認められることで、気持ちが救われたりするのも、女性同志のあたたかな繋がりにグッときました。

レズビアンカップルであっても、1人は仕事が忙しく、出産したママはワンオペ育児で疲れて産後うつになるしで、よくある「男が仕事して女が子育てする」みたいな状態に陥ってしまうとか、身近にあるレイシズムに傷つき心を擦り減らしている事も描かれていて、どの女性達もそれぞれ問題を抱えていたりするけど、対話する事で理解し寄り添い合い、大切な相手の尊厳を守ろうとするそれぞれの向き合い方が本当に良かったです。

もうすぐ小学生になるフランシスともスッタモンダの末に信頼関係を築き、フランシスが、冴えない人生のブリジットを讃えてくれるところもすごく好きだし、ブリジットがフランシスとその家族との関わりなどを通して、自分自身を肯定できたのが良かったです。

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