とりん

セイント・フランシスのとりんのレビュー・感想・評価

セイント・フランシス(2019年製作の映画)
4.1
2023年56本目

上映館数少なくてタイミング合わずで、映画館で見逃してしまってた作品。
予告から好きな感じだろうなと思ってたが、雰囲気、音楽、ストーリー含め、すごく好きな作品だった。

主人公であるブリジットは大学も中退し、仕事も中途半端、恋愛も上手くできてないそんな30代半ば、自分の生き方に自信も持てないし、嫌気が差している。
そんな彼女がある夏にナニーとして、同性愛夫婦の娘であるフランシスのめんどうを見ることに。
そんな小さな彼女との出会いが曇ってた彼女の視界を晴れやかにした、と大っぴらなストーリーではないけれど、不器用な彼女が自分の足なりでフランシスと向き合い、その両親とも正面からぶつかり合う姿、自分の母親との会話ひとつにもグッとくる。
ブリジットと同じく30代半ばの同年代である私にとって、今の生活に自信がなかったり、胸を張って生きていない姿が重なる部分もあり、何気ないシーンでも刺さるところが多かった。
ブリジットも30代半ばにもなって自分にとって中途半端に生きていることに嫌気を差している。でも彼女はちゃんと生きている。
外から見てるとそこは違うでしょとか何で目を離すのとか思ってしまうし、男にうつつを抜かす姿にまたやってしまうのかなんて呆れたりもしたけれど、それがあまりにもリアルで彼女自身がうまく描かれている。

ブリジットだけじゃなく、高齢出産を迎え産後うつに悩む母親、それを支えたいのに上手く接することができず感情が不安定になってしまうパートナー、みんな不器用ながらもぶつかり合い、生きているんだなと感じた。
それを教えてくれるのはフランシスである。
彼女は幼いながら知識は豊富で、いろんなことを知ってる。その反面わがままで気ままに動き回る姿はやはり子どもである。
そういう子だからこそ、時折口にする言葉に芯がしっかりあるし、いろんなことに気づかせてくれるし、元気をくれる。子どもってすごいなとも思ってしまった。

なんか一瞬シリアスで笑う場面でもないのに笑ってしまうシーンもあったり、何気ないシーンもすごく温かくなる。メインの4人がみんな良い人で、それぞれがしっかり生きてるし、この映画通して少しずつ成長している姿も良い。
同性愛の話や女性だからこそのセンシティブな話や設定もあるけれど、それを重く描きすぎず、最後までテンポ感や雰囲気崩さない感じも好印象。
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