ひれんじゃく

最後にして最初の人類のひれんじゃくのレビュー・感想・評価

最後にして最初の人類(2020年製作の映画)
4.2
Listen, patiently.

なんてこった!SFなのに一切人間が出てこねえ!映りもしねえ!ティルダ・スウィントンによる超豪華朗読劇じゃねえか!!!と思ったけどなんか引き込まれてしまった。元の話が面白かったからってのもあるかもしれないけど、映画というもの自体に対して考えてしまう。映画を成り立たしめる要素はなんだろう。何があれば映画なんだろう。

これに関しては映画と呼べるのかどうかよくわからんことになってたけど、朗読にしてはモニュメントの表情が豊かすぎてちょっと違う、じゃあなんなのだろうと。PV?

謎のモニュメント群に圧倒されつつ、かつてソ連が試したとかいうショットと文脈の関係性(腹が減ったという文の後に男性を映すとその人がマジで空腹なように見えるとかそんな感じだった)に思いを馳せていたら、たまに挟まる瞬く光のショットが天才すぎて急にSFになるのに感動した。一切人間が出てこなくても、宇宙が映らなくても、精密なCGで場面を再現しなくても、SFは語れるのだなあ。

しかしなんだかんだ謎だ…と思いながら夜空を眺めていた時、ふとこの滅びゆく人類の心の内を想像して絶望したんだよなあ。もしわたしたち人類がそこまで存続していたら、いつか必ず太陽にも終わりが来る。その終わりに際して何もできずに指を咥えて滅亡を待つだけってなったら、どれほどの深い絶望や恐怖を抱くんだろうか、と。この映画ももちろん、今見ている街の明かりも何もかも、その時まで残され受け継がれているかもしれない全てのものが人類の終わりと共に掻き消える。そのあとはなんだ?無か?あまりの果てしなさに呆然として夜景を眺めていたことを思い出す。おそらくだけど、映像があったら最後の人類が私に語りかけてきた内容が襲いかかってくる、なんて体験はできなかったのではなかろうか。
ひれんじゃく

ひれんじゃく