じゅ

ペルシャン・レッスン 戦場の教室のじゅのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

トールキンもびっくりだな。

とあるユダヤ人がペルシャの本をもらってペルシャ人Joon Razaのふりをして、イル・クラウス・コッホ親衛隊大尉殿にペルシャ語と称する創作言語を教えながら生き延びましたと。
次第にRazaに友情か何かの情を抱いたコッホ。米軍の進軍のため独軍が収容所の収容者を片っ端から殺して書類を燃やす中、コッホは「肉の缶詰20個を懸けて守る」と約束したRazaを連れて収容所を脱出する。途中で別れ、コッホは偽の身分証を使って兄がいるというテヘランへ行き、Razaは連合軍に保護される。コッホは通じるはずのない"ペルシャ語"とドイツ的風貌で怪しまれて捕まり、Razaは連合軍の聴取で収容所での犠牲者2840人の名を涙ながらに語る。

ちなみに、「Razaはおまえの名か?Joonはファミリーネームか?」とコッホに問われてその場凌ぎでそうですって言ってたけど、Joonは「親愛なる」って意味なのね。
字幕で出されてたから、字幕出すってことは視聴者の俺らが知っとかなきゃいけない(つまり今後「Joon」を巡って大事件に発展する)のかと思ってひやひやした。特に何ともなかった。


これ実話ベースか。凄いな。きったねえ字で仕事の遅い看守に代わってRazaが収容者の名簿の記載を任されることになって、名簿に書く名前から効率的に架空の言語を創作しまくったのも本当なんだろうか。
ユダヤ人とか敵国の人物の名前を元に創られた言葉をコッホは「美しい響きだ」とか称賛してたんだよな。なんとも味わい深い。
コッホが必死こいて覚えたのは、誰と話せるようになるわけでもない無意味な言語。一方でRazaが必死こいて覚えたのは、歴史の暴挙の犠牲になった意義ある名前たち。互いに覚えたものは同じ根っこだけどその意味はこんなにも違う。

コッホ自身で見抜くことはできなかったな。Razaが2840人の犠牲者の名前を言えたってことはそのくらいの数の創作言語を覚えたってことなんだろうけど、それが収容者の名前を簡単にもじったものだと最後まで気づかなかった。いつでも手元に名簿があったにも関わらず。
鉄道が破壊されたからってことで収容者が使える駅まで歩かされることになって、Razaがその列に混ざって行こうとしてコッホに見つかったときに、コッホは収容者たちを指して「名もなき者」とか「価値のない」とか言ってたか。本当に彼にとって名前も価値もない人間たちだったんだな。


まあ親衛隊大尉殿、今度はご自分が収容所で達者でやってくれ。


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【2022/12/04追記】
冒頭の方でbased on actual eventだかtrue storyだか書いてあった気がしてたんだけど、後でググってみたら「短編小説に着想を得た」って書いてんな。どこでこの架空っぽい記憶が生じたんだ。
じゅ

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