木蘭

ペルシャン・レッスン 戦場の教室の木蘭のレビュー・感想・評価

4.6
 良く出来たホロコースト物であると同時に、言葉が作られ使われる事の美しさを描いた話だった。

 冒頭から言語学習の経験がある人間なら吐きそうになるくらい過酷な状況に目眩を覚えるが、やがて単語に意味付けがなされ始めると、それはとても皮肉で残酷な方法とはいえ、言葉が誕生する神々しさを観る事になる。
 そのバラバラだった単語が、一つに繋がり、二人の間に共通の言語が誕生し、つたないながら言葉が交わされる瞬間・・・それは涙がこぼれ落ちるのを止められないほど感動的な瞬間だった・・・それが恐ろしくも滑稽な状況だとはいえ。
 一つ一つの単語には来歴が有り、通じ合う言葉がどれだけ素晴らしいものなのか・・・本来は・・・というのを実感させてくれる物語だった。

 収容所物としては、これ見よがしな苛烈な描写は少な目で、看守や兵士も判りやすい悪役は居ても、比較的エレガントでスマートで、良くも悪くも人間味があるのだが、それ故に淡々と人が消えていく様は恐ろしいなぁ・・・と感じさせた。
 良質な寓話だった。
木蘭

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