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ペルシャン・レッスン 戦場の教室のqqfowlのレビュー・感想・評価

5.0
1942年、ナチスに捕まったユダヤ人青年が、とっさに自分はペルシャ人だと嘘をつき、たまたまペルシャ語教師を探していた収容所の大尉に、創作のペルシャ語を教えることに…

1942年といえば、1月にヴァンゼー会議で全ユダヤ人の絶滅が決定された年。収容所では、戦前の日常を引きずりながら職務を遂行する看守と、毎日死と隣り合わせの囚人が顔をつきあわせている。地獄みたいな異常な状況。

そんな中で、主人公のユダヤ人青年ジルは、ペルシャ語を勉強したいクラウス・コッホ大尉に、なりゆきで創作ペルシャ語を教えることになってしまう。大尉は勉強熱心で一度教えた単語は忘れない。1つの間違いが命取り。

コッホ大尉がペルシャ語を覚えたい理由は、戦後、テヘランでレストランを開きたいから。収容所のユダヤ人たちは、労働すら死への道筋で、誰一人未来がないのに。皮肉すぎる対比だった。

ジルは、たくさんの単語をどうやって毎日創作すればいいんだと絶望するが、大尉に囚人名簿の清書を命じられて、ある方法を思い付く。



~ネタバレ~



それは人々の名前から単語を創作するというアイデアだった。

こうして創作ペルシャ語授業は順調に進み、1000以上の単語が生まれ、ジルと大尉は会話ができるまでになった…


ラストは、地雷原で大尉やられちゃうんかな?と思ったら、そうはならなかった。惜しい。


大尉は、ドイツから逃げるため、自由になるためにペルシャ語を習ってたつもりだったのに、実は全部嘘で、自分たちが死に追いやってたユダヤ人の名前(の一部)を必死に暗記してたっていう、この皮肉がすごいと思った。ムジナに化かされる昔話みたい。ちょっと全体的にできすぎとか、冷静に考えると突っ込みどころもあったけど、それでも、地獄のような極限状況で、死にゆくユダヤ人の名前から創作された嘘の言葉で心を開いてしまうナチス大尉という構図はとても面白かった。
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