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ペルシャン・レッスン 戦場の教室のsyuheiのレビュー・感想・評価

3.5
2020年のヴァディム・パールマン監督作品。

第二次大戦中ナチス親衛隊に捕まったユダヤ人青年ジルは収容所移送中のトラックで偶然知ったたった1つのペルシア語をよすがに咄嗟にペルシア人を名乗る。親衛隊の大尉がペルシア語を学びたいという理由で処刑を免れたジルは出任せのペルシア語レッスンを始めることに。バレたら即銃殺、彼の運命は…?

ユダヤ人の男が語学を頼みに命をつなぐ話かと思ったらペルシア語という名の完全オリジナル言語を作り出してしまうという嘘みたいな話だが、現実の出来事に基づくそうな。最初こそ単語を創作&記憶することに苦労するジルだがその言語で大尉にペルシャ語会話の手ほどきをするまでに"上達"する。

序盤こそ若干ユーモラスなシーンもあるがジルにとってはバレたら即処刑。親衛隊の中にはジルの"語学力"を怪しむ眼もあり始終ヒヤヒヤしっぱなし。1日4単語覚えたいという大尉の要請でジルは毎日創作に苦労するがある仕事を任されたことで単語をどんどん作れるようになるのだが、これが実に切ない。

こう言っては申し訳ないがジルを演じるナウエル・ペレ・ビスカヤーさんは背が低く痩せぎすなため暴行やいじめを受けるシーンの悲壮感がすごい。大尉の不興を買って軽労働から採石場に回され足蹴にされるシーンではそのズタボロぶりが本当に気の毒だった。

血しぶきなどわかりやすいショッキング描写こそ無いがユダヤ人がゴミのように殺され焼かれるシーンは強く印象づけられるためジルがいつこのような目にあってもおかしくないと思わされる。裸の遺体が山積みにされた手押し車が焼却場へ向かう俯瞰ショットは特に印象に残った。

ドラマの緊張感は途切れなかったがやや説明不足や消化不良に思われる部分もあった。ジルをずっと目の敵にしていた兵隊の顛末は描かれないし、収容所内で起きるある殺人事件のくだりはもうちょっと映画として盛り上がる描き方があったのではと思われる。事実に基づくなら脚色に限界はあるかもだけど。

https://x.com/syuhei/status/1737048733261742356?s=20
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