しば

ペルシャン・レッスン 戦場の教室のしばのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

ペルシャ人を偽って生き延びるという本筋もサスペンスがあって好い。しかし囚人の名前が言葉の一部として採用されたことで囚人たちの生きた証が残るというオチにも感心した。出オチ感もあるけど素直に面白い。
コッホ大尉は自分に都合の良いジルのみを寵愛する。大尉における「差別」は肉の缶詰で象徴されているように思う。対するジルは病人で発語障害の囚人に慈悲をかける。ユダヤ人差別という内容に掛けて、このような差別と無差別という対比も作品の意図としてあるように感じる。
ところで、コッホ大尉は実直に偽ペルシャ語のフラッシュカードを捲ったり、所長の詰問に狼狽したり、癇癪を起こしたりと、完全な悪人として否めない感じがある。幼少期の苦しい経験や、テヘランにレストランを開きたいという願いはもはや愛らしさすら感じる。そのような弱い人間にすら悪意が無意識のうちに内面化されているという歪な状態が、ある種リアルというか、観客の内面に問いかけられているのではないかと思わせられる。
逆に言うと、愛憎劇も繰り広げられる中でジルが聖人のように描かれるのは何とも言えない。ペルシャ人ではないことがバレないようにと行動しているに過ぎない。葛藤が少ない。コッホ大尉の方が人間臭いとさえ思う。
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