ノーカラー、ノーナレーション、ノーBGM。
MA(マルチオーディオ)の極地。
家畜として産まれた、自然界とは一線を画する生き物を異常なほど長回しでねっとり撮っただけ…ではなく、時には不快感を伴うような環境音でモノクロを極彩色に塗りたくった実に奇妙な映画。
子豚の叫び声、鶏の叫び声、牛のモー。
木々のざわめきや雨音、乾いた土やぬかるみを踏みしめる音、噛んで軋む木材…。
かなり後付けで音を足してると思うけど、生々しく時に不快な音の数々は、もはや映像以上に臨場感を駆り立てる演出。
特に誇張してるのが家畜に群がるハエの羽音。
右へ左へパンするこの音は劇場の音響によってかなり強烈。(ヘッドホンとかヤバそう…)
ドキュメンタリーとは言え、やはり映画でこの音が連想させるのは『死』。
もちろん生きている以上何者も死ぬ訳だが、家畜の場合はちょっと事情が異なる。
人工的に生まれて人工的に死ぬ過程の異様さを醸し出したような死の音。
最後、ドナドナ的なコンテナに止まるハエ。エンジン音に負けないボリュームで奏でられる死の音。明確ですな。
音ばかり触れたけど、映像も。
昨今のネイチャー系ドキュメンタリーあるあるだけど、どうやって撮影してるんだってくらい豚も鶏も牛もまー近い近い。
特に子豚より低い目線で、歩き回る豚の親子の間を縫うようにカメラが追うシーンは見入った。
ところでさ、眠くなる映画ってあるよね。
つまらないとかじゃなくて、脳みそに直で睡眠効果を流し込むようなやつ。
…うん、寝るよねこれ。