うみぼうず

GUNDA/グンダのうみぼうずのレビュー・感想・評価

GUNDA/グンダ(2020年製作の映画)
4.0
アーティスティック豚ムービー。どんな意図を以てそれぞれ映像を使っているのかそれぞれのシーンを入れているのかを考えていくとキリがなく、ただボーッと眺めているだけでも面白いが考えていくとさらに深みが増すのかなと。

白黒だからこそ豚のかわいさと汚らしさは良い意味で伝わってこないので映像に集中できる。人間が一切映らないが人の加工があるものは映っていて、完全な自然の営みではないことは冒頭から予見される。それがラストに繋がるのだけど、(撮っている)人間が演出しているわけではない自然のドラマになっている。
たぶんグンダに踏まれる子豚の悲鳴はめちゃくちゃ痛々しく、なぜ踏んだのかの説明もないままだし恐らくその子豚が後遺症出てしまっていて悲壮感が重く伸し掛る。
豚の乳も最初は微笑ましいものだったが、だんだんと不気味なものに見えてくるから不思議。

けど、そうした一見すると自然の予測不能さ さえ人間の家畜として"生かされている"からこそ見える情景とも言え、複雑な気持ちになる。人類史上 家畜との付き合いは数千年以上続いているので今さら辞めようと言うつもりもヴィーガンになるつもりもないが、飼うならば自然がいいなと。愛玩動物としてシッポ切ったり成長わざと止めたりする不自然さはおかしい、と以前から思っていたがこの映画で改めて強く思い直せた。構想30年かかったとのことで、プロパガンダにしたくないという監督の狙いはしっかりできていたと思う。

そんな中 音がとても良く、もちろんBGMなどないのだが鳥のさえずり草のざわめきそして動物達の鳴き声。こうした音はいつまでも聞いていられる心地良さがある。構想30年の割に撮影は7時間だったらしいが、それにしてはどう撮ったのか不思議に思う映像もたくさんあり、とても見応えある作品。
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