冷蔵庫とプリンター

荘園の貴族たちの冷蔵庫とプリンターのレビュー・感想・評価

荘園の貴族たち(2020年製作の映画)
-
 戦争は悪か?といった比較的シンプルな問いから始まり幼稚な西洋中心主義などを経て反キリスト論へと至る会話劇で、プラトン対話編を彷彿とさせるよく練られた秀逸なダイアローグの妙味を堪能できる傑作。
 中盤の明らかに時代遅れのヨーロッパ文明礼賛と突然の乱入者の件から明らかに雲行きが怪しくなっていくのだが、反キリストの到来という形で"予言"されるロシア革命と「時代は変わった」と言う貴族たちの言説は、上流階級の黄昏を描いたジャン・ルノワールの傑作『ゲームの規則』を想起させる。一方で本作はルノワール的ヒューマニズムとは無縁なようで、喋るだけで動こうとしない(明らかに様子がおかしくても小さい鈴を鳴らし続けて立ち上がろうとすらしない)貴族たちと、反対に忙しなく動き続ける召使たちの対比も、結局のところロシア革命は言葉=理性の敗北にほかならないことを示しているようで興味深い。