クリムゾンキング

荘園の貴族たちのクリムゾンキングのネタバレレビュー・内容・結末

荘園の貴族たち(2020年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

第一次大戦前夜、ロシアのある荘園を舞台にそこの主とゲストたちがさまざまな宗教観、戦争観、社会規範などをひたすらしゃべり倒す。

原作が哲学者の著書の映画だそうで、通りでペダンチックな内容なわけだ。

戦争の是非だったり、福音書の解釈の違いから次第に互いの宗教観の違いを露呈しててくるあたりの宗教戦争を思わせる応酬だったり、よくしゃべる。

対してカメラワークはというとこれが真逆でものすごく静か。
舞台劇のように引きで撮られたアングルで基本的に複数の登場人物が映され、その後ろを執事や給仕など使用人たちが入れ代わり立ち代わり仕事をしており、ほとんどのシーンが10分を超える長回し。
主要人物そっちのけで裏方に注目してみるとなかなか面白い。
第3章のエドゥアールと第5章のオルガだけは異質で、「俺らヨーロッパ人は最高!ほかの野蛮人連中は俺らの価値観に倣わないといけないのだー!」という(今の時代の価値観では)トンデモ論を繰り広げる章と、「私たちは神の意志によって遣わされたから神様に従ってればみんなハッピー!(要旨)」という理論を語りだす章に関してはこの作品にしては珍しく互いの顔面のアップの切り替わりが激しくこの論証がいかに不毛なことがよくわかる。

というかこれらの章に限らず延々と講釈を垂れているだけで全然生産性のない内容なので、こいつらこそ「快楽にのみ生きるキノコ」であると誰しも思うことだろう。

映画的な動きはほぼ皆無で中盤にテロリストというか群衆に襲撃されるシーンが少しあるだけで面白いかと言われれば観ていて全然面白いものではなく、ほかの会話劇型のサスペンス映画のような緊張感もないのだけど、哲学や禅問答みたいなのが好きならば延々と観ていられる作品だった。