岡田拓朗

砕け散るところを見せてあげるの岡田拓朗のレビュー・感想・評価

3.5
砕け散るところを見せてあげる

オンライン試写会で鑑賞させていただきました。
また公開前に更新するかもです。

前半と後半で作品の雰囲気や印象がガラッと変わる。
それでもその根底にあるものは揺るがなく、全体を通して輪廻転生を説いてるように感じ、哲学的かつ予言的な何かを映し出したい妙な思惑を感じるような作品でもあった。

それはあまりにモノローグが多いのと不自然に幻想的なシーンが多いのとヒーローやUFOという言葉が乱立していて、現実的な題材なのに妙に異世界に誘われていくような感覚に陥ったからかもしれない。

(特に前半は)シーン一つ一つがやたらと長くて冗長に感じたし、肝心な堤真一さん演じる玻璃の父親の過去や思惑みたいなものが、全く映し出されないのも違和感として残る。
物語を辿っていくと、父親がおかしいのではないかということが、少しずつ明らかになっていき、それは特に身体的変化によって追えるようにはなってる。

色々と振り返ってみると、これは愛とヒーローであり続ける理想の生き方を、天秤にかけた上でどちらを選択するか、はたまたどちらもを選択する道はないのかを示す物語なのではと感じるようになった。

愛とヒーローは、どちらかを選択するとどちらかを捨ててしまう展開になることが多い。
それはヒーローとは他者を危険を伴ってでも助けようとするため、自らに死の危険が迫るためだ。
それが死後も魂は誰かの中で生きている輪廻転生を説くことで、両者が共存する可能性を示してるような感じがした。

ホームページを見てみると、北村匠海さんの役が真っ赤な嵐、原田知世さんの役が???となってるのも引っかかる。
北村匠海さん役は清澄と玻璃の子であり、原田知世さんの役は玻璃が成長した姿(玻璃自身)だと思ったが、輪廻転生が根底にあるとしたら必ずしもそうではなさそうな気もする。

砕け散るところの示すものは何なのか。
どちらからどちらに見せてあげたのか。

色々と考察の余地がありそうな作品だけど、個人的には愛を持ってヒーローとして生きてきた(自分ではない誰かのために生きてきた)人は、霊魂としてこの世に何度でも生まれ変われるという、愛とヒーローをどちらも大切に生きられる可能性について、示したかったのかなと感じた。

P.S.
役者さんの演技はとてもよかった。
特に石井杏奈さんが凄い!
この映画が良くも悪くものどちらに転ぶかは、ほぼ全て彼女の演技に委ねられてると言っても過言ではない。
これは演じるのが相当難しい役だったんじゃないかと思う。
あとは、ノリの軽い清原果耶さんがとてもよき!この路線でも色んな作品で観たいと思った。
堤真一さんの怪演にはゾッとした!
岡田拓朗

岡田拓朗