シエル

みんなのヴァカンスのシエルのレビュー・感想・評価

みんなのヴァカンス(2020年製作の映画)
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ヴァカンスというのは別に何もなくてもせつない。それはきっと終わることがわかっているから。

思い込みが激しくて行動力あるけど自分勝手で嫉妬深いフェリックス、思慮深くて優しいシェリフ、生真面目でマザコン気味のエドゥアール、絶妙な三人組の一夏の出来事。

気まぐれな女の子と、その様子にイラつく姉、ヴァカンス映画では欠かせない、水のスポーツが得意なイケメン、クスリよりも赤ちゃんが効くって気づいたメンタル弱め男、忙しい夫に放置されてる子持ち女… どのキャラクターも三人のヴァカンスをイキイキとリアルに浮かび上がらせている。

エドゥアールがジャック・ロジエ監督『オルエットの方へ』のジルベールを思い起こさせる。でもエドゥアールはジルベールと違って、不本意だったキャンプを切り上げたりせずに、たぶんこれまでと違った自分を見つけた。

カラオケの場面はどうしてかわからないけどぐっとくる。エレナとシェリフのところももちろんいいけど、メインキャラクターではない人たちが楽しそうに延々同じフレーズを繰り返しているところが特に。

観てる時もいいけど、あとから「なんかよかったなー」って思えるのがよいヴァカンス映画の特徴で、本作も例に漏れない。

タイトルÀ l’abordage の意味するところは何なのかをいま考えている。

(2022年映画館37本目)
シエル

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