Ricola

みんなのヴァカンスのRicolaのネタバレレビュー・内容・結末

みんなのヴァカンス(2020年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

フランスはヴァカンス映画大国だと個人的には思っている。
『ぼくの伯父さんの休暇』や『アデュー・フィリピーヌ』、イヴ・ロベール監督の『プロヴァンス物語』シリーズなど…。
フランス人は昔から夏のヴァカンスをめいっぱい楽しんでいる。
それは穏やかなリラックスした時間だけではなく、ちょっと危険でドキドキやトキメキを感じる時間でもあるのだ。

いわゆる古典的ハリウッド映画のような筋書きでありながらも、何とも軽いタッチで爽やかに描かれる。
こういった作風はこの作品に限らず、ギヨーム・ブラック監督作品全体に一貫してある特徴なのではないかと思う。
出会い、そして別れ。その間にいざこざがありつつも、友情や愛情が育まれていく。
ひと夏の数日間でさまざまな出来事が、若者たちに舞い込んでくる。しかしそれらが仰々しく描かれることはなく、コミカルさと深刻さがいい塩梅で交互に映し出される。


ヴァカンスを楽しむ人々は皆水辺を好む。水辺と言っても、この作品では川とプールが登場する。それはつまり自然か人工かの違いである。この差異が、シリアスとコミカルの緩急の描き分けに利用されている。
例えばこの自然と人工の領域の境目には、ちゃんとフェンスが置かれており、そのフェンスの奥にある川で遊ぶフェリックスとヘレナを、シェリフとエドゥアールが眺めているという対比が描かれる。
また他のシーンで、洞窟に遊びに来たフェリックスとヘレナ、エドゥアールらがドロドロとした感情の渦に巻き込まれたかと思うと、すぐ次のショットではプールサイドでの平和かつかわいらしい風景が映され、そのギャップについ笑えてくる。
このように、川もプールも人々が集う場所ではあるが、危険性と隣り合わせな自然に対して、人工物であるプールという環境は常に守られている。
それは、フェリックスのグイグイ攻める恋愛とシェリフの穏やかな愛の対比ともリンクしているのではないか。

とはいえ、最終的に「セックスや恋愛だけじゃない関係だってある」という言葉が大いに皮肉に響いてくる。
自然であろうとそうでなかろうと、人間同士の関係性は流れに身を任せ、予測のつかないものなのだ。
Ricola

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