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未来は私たちのもののtdswordsworksのレビュー・感想・評価

未来は私たちのもの(2020年製作の映画)
3.6
27歳の監督の現代的な感性による引き算が見事にハマっている。個人的には複雑な事柄を複雑なまま描く映画が好みではあるけれど、この映画は残酷な絶望さえも観客の予想の範囲内。話を決して横道に反らさずに、小綺麗な通りと家と施設とクラブを行き交いながら主題を柔らかに掘り下げていくのは、なるほど居心地のよいものだった。

要素が必要最小限に削ぎ落とされているぶん、割とハイコンテキストな映画といえる。日本人はやや消化に苦しむかもしれない。
・ペルシャ系はアラブ系とよく間違われる。アモンが最初にパーヴィスに「アラブ出身?」と声をかけたのも、わかってたんだろうと思う。一方、移民大国であるはずのドイツにおける「中東系の顔」の受容度合いがわからず、セックスの相手から距離を置かれるエピソードが続くのは、実際のところそうなのか、監督の主観的表現なのか。
・セーラームーンをどう捉えればよいかはさらに難題だ。何せ、セーラームーンに始まりセーラームーンに終わるのだから、最重要のメタファーであることに議論の余地はないのだが…とここで監督のインタビュー記事を見つけた。美少女戦士であることを両親にも言えないというところに共感を覚えたとのこと。なるほど、「愛と正義の戦士」は、両親を異邦人であると感じているパーヴィスの複雑な心境を理解するためのヒントなのか。
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